株式は、他の主要資産に比べてリターンが高いと言われています。
経済学では、株式のリターンの源泉は、人間の損失に対する強い恐怖心にあると考えられています。
この記事では、経済学における株式のリターンについての考え方を、わかりやすく解説したいと思います。
経済活動には、リスクが付きもの
経済学では、株式が右肩上がりな理由を、「リスクを受け入れた報酬」と考えています。
災害、感染症、不況、ライバル企業の台頭など、ビジネスにはリスクがつきものです。
そのため、リスクを誰が負担するのか明確にしておかないと、物事が進みません。
「失敗した場合のことは、その時に考える」というようないい加減な会社では、商品が売れなかったときに、どうなるかわかりません。
きちんと給料などを払ってもらえるか心配ですから、従業員が集まらないでしょうし、他の企業も取引を控えると思います。
このように、経済活動のリスクを引き受けてくれる存在は、とても重要です。
そして、資本主義において、最も大きなリスクの引き受け手が株主です。
なぜなら、従業員への給料や取引先への支払いなど、他のすべての支払を終えて、残ったお金が(もしあれば)株主のものになる仕組みだからです。
経済活動において、もっともハイリスクな立場にあるのが株主と言えます。
人はリスク回避的
経済活動にリスクが付きものである一方で、人間はリスクが嫌いです。
特に、行動経済学という分野で、「人は損失を強く嫌がる」という傾向が、繰り返し確認されています。
この損失回避のバイアスについて、先進的な研究を行った2人の研究者は、ノーベル賞を受賞しています。
「損失が嫌いなのは、当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、ここで言いたいのは、利益の喜びと損失の不快感を比べた場合です。
つまり、「1万円儲かったときと、1万円損したときを比べると、損した場合の方が感情の振れ幅が大きい」ということです。
その結果、利益と損失の確率が同じなら、利益の金額が損失より多くないと、心理的には割に合わないのです。
つまり、経済活動にはリスクが付きものであるにも関わらず、人間はリスクが大嫌いなのです。
リスク・プレミアム
これまでの説明で、リスクの引き受け手である株主のニーズは大きいのに、損失回避バイアスにより、なり手は少ないことがわかりました。
その結果、株主に有利な条件で、取引が行われることになります。
その「有利な条件」こそが、株価が右肩上がりになっている理由なのです。
これを次の数値例で確認します。
数値例:リベビディア
仮に、「リベビディア」という会社があったとします。
リベビディアは、決算を控えており、次の図のような見通しとします。
好決算(確率50%)で株価3,000円に、悪い決算(確率50%)で株価が1,000円になります。
数学的な期待値で言うなら、株価2,000円が妥当な株価になります。
みなさんは2,000円で買いますか?
ギャンブラーでない限り、わざわざ買う人はいないでしょう。
特に、大きな金額を投資する場合には、避ける人が多いはずです。
この心理の背後にあるのが、先ほど説明した損失回避バイアスです。
このように、数学的な期待値で株価が決まってしまうと、ギャンブラーしか買わない値段になってしまいます。
そのため、多くの人が「買ってもいいかな」と思う株価は、期待値より安くなる必要があります。
たとえば、1,900円だったらどうでしょうか?
期待値2,000円の株が1,900円で買えるわけですから、理論上100円分得することになります。
これなら、考えてみても良いかもしれません。
この100円分のように、投資家が保有する気になるような割引額を「リスク・プレミアム」と言います。
株式は、このリスク・プレミアムの積み重ねで右肩上がりになっているのです。
つまり、リスク・プレミアムは、人間の損失に対する不安や恐怖を補償するものと言えます。
インデックス投資の仕組み
インデックス投資は、リスク・プレミアムを確実に実現させる投資法です。
ポイントは、銘柄の分散と時間の分散です。
銘柄の分散
たとえば、リベビディアを、1,900円で買ったとします。
期待値は2,000円ですから、理論上は100円儲かっていることにはなります。
しかし、結果として悪い決算が出て、損をする可能性は十分にあります。
もちろん好決算の可能性もあるのですが、好決算と悪い決算の落差が大きく、投資家としては不安です。
そこで、リベビディアのような会社をたくさん集めて、投資信託にするわけです。
そうすることで、投資信託の中では、好決算の会社と悪い決算の会社がだいたい半々になります。
すると、好決算と悪い決算が相殺し合って、損益が平準化します。
仮に、すべての会社がリベビディアと同じ条件だとします。
そうすると、好決算の会社は、株価が3,000円になり、悪い決算の会社は1,000円になるわけですが、投資信託の中では、両者が半々です。
よって、平均すれば株価は2,000円になります。
これらの株を、それぞれ1,900円で買っているわけですから、全体としては、100円の利益が実現します。
つまり、イメージとしては、決算のたびに、投資信託の価値がリスク・プレミアムの分だけ上がっていくことになります。
このようにして、理論上の利益であったリスク・プレミアムを、より確実に実現することができます。
時間の分散
個々の企業レベルで好決算の確率が50%、悪い決算の確率が50%だとしても、市場全体で「好決算の会社と悪い決算の会社がだいたい半々」になるとは限りません。
なぜなら、コロナショックやリーマンショックのようなことが起こると、多くの会社が同時に悪い決算を出すことになります。
このような市場全体へのリスクに対しては、長期保有をすることで時間的に分散させます。
つまり、不景気がある一方で、好景気もあるわけですから、長期で持っておけば両者が相殺されるという考え方です。
インデックス投資はリスク・プレミアムを確実に実現させる手法
インデックス投資は、
①多くの企業を保有して、個別企業のリスクを平準化
②長期保有で市場全体のリスクを平準化
することで、確実にリスク・プレミアムを実現させる投資法です。
まとめ
・ビジネスにはリスクがつきもので、誰かがリスクを負担しなければならない。
・しかし、人間はリスク回避的であるため、リスクを取りたがらない。
・そのため、リスクを取る株主に有利な条件が付与される。この有利な条件をリスク・プレミアムという。
・インデックス投資は、リスク・プレミアムを確実に実現させる投資法
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